オーディエンスデータの基礎知識:ニュースルームのデータを活用するための実践的な3つの方法

ニュースの読者層が紙媒体からデジタル媒体へと移行するにつれて、多くの編集局でデータは中心的な役割を果たすようになりました。フィナンシャル・タイムズ(FT)では、質の高い読者を多く惹きつける記事の決定、新規購読者への動機づけと解約率の低減、サービスの開発や改善など、多くのプロセスにデータが組み込まれています。FTが有料デジタル購読者を100万人以上獲得するプロセスにおいて、データの活用は必要不可欠でした。

多くの編集局では、データ活用の取り組みはまだ始まったばかりであり、どのデータポイントが有用で、どのようにそれを実際の行動に反映すべきかは明確になっていません。本ブログでは、編集局のデータを意思決定に活用し始める際の3つの実践的な方法についてご紹介します。

そもそも、データとは一体何なのか?

データとは、意思決定に使用できる、測定と分析が可能なファクトの集まりを指します。データには、主に定量データと定性データの2つの形態があります。定量データとは、月間読者数やモバイルからのアクセス率など、数値的なデータです。定性データとは、読者から直接寄せられたテキストや音声など、文章として記述できるデータです。どちらも、編集局が読者についてより深く知るために役立ちます。

データは最終成果物ではなく出発点であり、組み合わせて分析する前に、関連性や精度をチェックする必要があります。この時点で、インサイトを抽出して不足情報を補うことで、編集局やより広範なビジネス上の意思決定に活用できるようになるのです。以下は具体的な活用方法に関する3つのアイデアです。

例1:コンテンツに関する指標の測定と共有

出版社の中には、コンテンツ指標を測定したり、どれだけの人々が自分たちの報道記事を読んでいるのか確認したりすることに抵抗を感じる企業もあります。そこには正当な懸念があり、彼らはこのような指標だけに依存してしまうと、広く読まれることを優先して重要度の低い記事ばかりを採用することになりかねないことを恐れています。例えば、気候変動に関する記事よりも娯楽記事を優先するなどです。コンテンツ指標は、あくまでも編集者の判断を伴って使われるべきものです。読者の興味を引くポイントを理解し、見出し、トピック、サイト内での記事の配置など、読者に影響を与えるものをよく考えることで、そうした情報がコミッショニング(記事の依頼)や記事配信における判断材料として活用できるようになります。

以下に主なコンテンツ指標をいくつかご紹介します。

  • ページビュー:その記事が読みこまれた回数
  • ユーザー数:その記事を訪れた人数
  • ページ滞在時間:1人がそのページに滞在した時間

ページビューとユーザー数からトラフィックの総量を導き出すことができます。ページ滞在時間は、その本来の情報に加えて、エンゲージメントの指標としても利用できます。つまり、ある記事に対する読者の滞在時間が長い場合、その記事は最後まで読まれている可能性が高くなります。

重要なのは、このデータを編集局で共有することです。例えば、朝のニュースミーティングで前日のトップ記事をハイライトしたり、週ごとに最もパフォーマンスの高い記事をまとめたメールを送ってチーム内で共有したりするとよいでしょう。そうすることで、読者がどのような記事を読んでいるのかを全員が把握でき、チームメンバーがパフォーマンスの低いコンテンツを改善するための解決策を考えられるようになります。

例2:オーディエンスが誰なのかを知る

もう1つの重要なデータセットは、オーディエンスの特性を示す属性情報です。属性情報のデータには、通常、年齢、性別、地理的な場所などの要素が含まれます。この種のデータを活用するには、Google Analyticsのようなオーディエンス分析ツールを利用したり、ファーストパーティデータの収集に投資したり、オーディエンス向けアンケートで属性情報に関する質問を組み込んだりするなどが有効です。

このデータからコアな読者層に関する基本的な情報を把握し、そこに、記事の閲覧率などのデータが合わさることで、より詳しいインサイト(女性読者よりも男性読者により好まれるトピックなど)を得ることが可能になります。

FTでは、属性情報データを活用して、現在の読者層におけるギャップを浮き彫りにしています。FTのストラテジックインサイト担当責任者であるリンゼイ・ニコルは、最近のポッドキャストでFTストラテジーズの取り組みに言及し、属性データを活用することで男性に比べて女性へのリーチが少ないことを特定できた事例を話しました。リンゼイのチームは、この問題を組織全体に周知し、女性がどのようなコンテンツに興味を持ち、どのような閲覧習慣を持っているかを把握するなど、女性の読者を増やすためのさまざまな施策に部門横断型チームで取り組みました。

例3:ユーザーの習慣やニーズを把握する

読者がどのように自社の製品を使用しているかを調べることで、ユーザーにとって最も価値のある機能や改善点などを把握できます。こうしたデータを収集する方法の1つは、定性データと定量データ両方のアンケート調査を通じて、読者から直接意見を聞くことです。アンケートは、いくつかのデータポイントに関する質問を絞り込んだシンプルなものから、広範な分野に関する質問を多く取り入れた詳細なものまで様々な形式が考えられます。

FTがおすすめする主なサービスの1つはニュースレターです。ニュースレターでは、読者は関心のあるトピックの最新情報を直接Eメールで受け取ることができます。ニュースレターは無料のサービスながら、購読者のエンゲージメントを高め、コンバージョンとリテンションの向上に役立ちます。ニュースレター購読者のニーズや関心事項をより深く知ることに高い関心が集まっていることを受け、当社のニュースレター担当チームは、オーディエンスフィードバックリサーチ担当チームと連携し、ニュースレターサービスの成功度合いを測定する取り組みを始めました。

まず、リサーチチームが簡単なアンケートを作成します。このアンケートには、ニュースレター購読者が改善点を提案できるよう自由記述欄を設けます。回答は主要テーマごとに分析され、その結果はニュースレターチームに共有されます。例えば、ニュースレターが短すぎるという意見が多ければ、コンテンツ制作チームは長さの調整を検討します。また、ライターの個性が読者に伝わっているようであれば、ライターはその表現力を高めていくことができます。このように、アンケート調査は、読者の好みを想定するためだけではなく、読者から直接フィードバックをもらい、その結果を実際のサービスに反映できるという点でも、非常に有効な方法です。

編集局に集まるデータを分析することで、オーディエンスが実際に何を考え、どの記事を読み、どのような人物であるかを、先入観にとらわれることなく理解できるようになります。データからインサイトを導き出し、それを編集局で有効活用することで、読者のエンゲージメントや多様化の機会の把握、読者のフィードバックに基づくサービスの改善など、新たな事業展開の道が開かれます。

FTストラテジーズは、データジャーニーのあらゆる段階で、データに基づく編集局の構築において出版業界をサポートしてきました。私たちは、自身のビジネスで得た知見やノウハウを用いて、貴社のオーディエンス分析をさらに有効化すべく支援します。ご興味のある方は、[お問い合わせ]からお気軽にご連絡ください。

著者について

サラ・ディアー、データアナリスト
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FTストラテジーズのデータアナリスト。オーディエンスインサイトや戦略的成長の分野において豊富な経験を有しており、以前はハフポストとガーディアンに勤務。アムステルダム大学でニューメディアとデジタル文化の修士号を取得し、報道業界のデジタルトランスフォーメーションを専攻。

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