メディアの変革を後押しするFTストラテジーズのこれまで
2023年、フィナンシャル・タイムズ(FT)はピンク色の新聞を展開し始めて130周年を迎えた。今でこそピンク色の紙面はFTブランドの象徴となっているが、当初は、無漂白の紙に印刷することで費用を抑えるために同色を採用していた(今日はもうその限りではないが)。
FTはその歴史に誇りを持っており、ビジネスリーダーのためのジャーナリズムとして信頼され続けている。FTストラテジーズが目指すのは、メディア企業のリーダーたちに世界水準のコンサルティングとアドバイザリーの提供をすることで、FTの成功を新たな事業領域で再現することだ。
この記事では、私がマネージングディレクターとして着任するまでのFTストラテジーズの成り立ちを振り返り、FTストラテジーズが他社と一線を画すもの、私が今後どのように、持続可能なメディア産業と新しいコンサルティングモデルの追求を継続していきたいと考えているかを紹介していく。
FTストラテジーズの成り立ち
2018年初頭、フィナンシャル・タイムズの取締役会は自社のテクノロジーやデータ、知的財産の収益化に関する社内調査を実施し、業界としては未知の領域への第一歩を歩み始めた。
業界の有識者や潜在顧客、そしてFT社員へのヒアリングをとおし、FTは自社の経験と専門知識こそが最も価値ある資産であるという結論に達した。実際のところこれは大きな驚きではなかった。FTは2001年にそれまでの常識を覆す形でオンラインコンテンツへの課金を最も早く開始した企業のひとつであり、2007年にはメーター制のペイウォールを設けたパイオニアだった。そして現在でもサブスクリプションビジネスの先頭を走り続けている。また何年にもわたり、ニューヨーク・タイムズをはじめとする報道各社がデジタルへの注力やサブスクリプションビジネス立ち上げへの助言を必要としているとき、そのホスト役を務めてきた。
この結果を受け、我々は2018年後半に小規模で実験的なコンサルティングチームを組成し、北欧の大手出版社とプロジェクトを初めて実施した。FTの経験を活用し、専門家としてFT社員がクライアントと連携することで、実践的かつクライアントに寄り添うコンサルティングを提供することができた。
2019年になると、「FTコンサルティング(当時の名称)」は、テート美術館やペンギン・ブックスなど、近接領域のクライアントを多数獲得し、そのビジネスを開始した。ビジネスを展開する中で、FTの「North Star」モデルを活用した長期的な戦略立案に関するコンサルティングが、特に高く評価された。現在もFTで使われているこのモデルは、FTが購読者100万人という目標を達成する上で基礎となったフレームワークである。クライアントが挑戦的な目標を設定し、それを達成するために社内連携を改善する上で、中核的な役割を果たすことが実証されている。
「デジタルを取り入れた編集主導のビジネスにおいて、FTストラテジーズは組織に親和性、野心、専門的な知見をもたらす信頼できるパートナーです。」 ペンギン・ブックス、オーディエンス担当マネージング・ディレクター
2019年末までに、FTはメディア業界に有意義なコンサルティングサービスを提供できるという当初の仮説に対し、確信を持つようになった。そしてFTストラテジーズというブランドのもと、コンサルタントとメディア専門家から成るチームを組成し、コンサルティング事業を正式に立ち上げた。これは国際ニュースメディア協会(INMA)およびGoogle News Initiativeと連携した「GNI サブスクリプション・ラボ」(欧州8社のデジタルサブスクリプションを強化し、読者からの収益を向上を支援する9ヶ月のプログラム)の立ち上げと同時期となった。
2024年現在、FTストラテジーズはメディア・コンサルティングのリーディング・カンパニーとして業界を牽引
これまでの実績として以下のようなものが挙げられる:
- スペイン大手紙エル・パイス、イタリアの老舗大手紙コリエレ・デラ・セラ、ケニアの報道機関ネイション・メディア・グループ、シンガポール・プレス・ホールディングス、英国ナショナル・シアターなど、世界70カ国以上、700を超える報道機関へのコンサルティング
- GNIサブスクリプション・ラボの参加企業(10万人以上の新規購読者獲得と6%の解約率削減をサポート)や、欧州の大手報道機関の解約率半減ならびに購読者50万人達成を支援するなど、ニュースの未来を確かなものにするためのクライアントの成果をサポート
- 解約予測モデルなどのAIモデルの実験の開始や、マーケティングキャンペーンのコンバージョン率10倍向上、登録読者のサイト回帰58%増など、幅広いサービスでクライアントをサポート
- Google News Initiativeと提携し、新聞社・出版者のビジネスとデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するプログラムを大幅に拡大
一方でFTストラテジーズが最も誇りに思うのは、クライアントが我々を認めてくれたことを物語る、フィードバックと継続され続けるプロジェクトだ。
「私たちと共にこの事業に取り組み、成功のために尽力しようとするFTストラテジーズの姿勢は、私たちが前進し続けることができた要因であり、FTストラテジーズのコミットは当社の変革にとって大きな意味がありました。」
他社と一線を画すもの
ここまで様々な要因について触れたが、改めて、FTストラテジーズを他社と異ならしめているものを私なりにまとめたい。
- FTという報道機関、FTを創り上げてきた従業員たち、そして様々な業界のバックグラウンドを持つ私たちのチームが持つ、生きた経験と貴重な専門知識
- 世界700社以上の、非常に多様なメディア企業との連携の実績
- データ活用、データ分析、AI(人工知能)を効果的に活用する経験
- 個別クライアントのニーズに合わせたサポートに加え、複数の企業の成功をサポートするグループベースのコンサルティングの提供というユニークなビジネスモデル
- 誠実さをもって協働し、クライアントが卓越した成果を得られるよう支援
今後の展望
事業のさらなる拡大に向け、FTストラテジーズは、より広範なメディア企業のニュース事業やそれ以外の分野における持続可能な成長の推進を重視している。
具体的には次のようなことを目指している:
- 変化をサポートするコンサルティングチームとして、メディアが信頼するパートナーとしての認知ならびに業界におけるリーダーシップを継続する
- FTの他の部門との経験を結集し、単なる総和以上の価値をクライアントにもたらす
- 既存のクライアントとの関係を維持・深化させ、戦略から実施に至るまで価値の高いサービスを提供する
- 提供するコンサルティングサービスをメディア業界全体に広げ、より幅広いメディアの課題に当社の経験を活用する
- 提供するサービスを拡大し、より広範な問題に対して、より多様なクライアントをサポートする
新たにFTストラテジーズのマネージングディレクターへの就任にあたり、今後、多くの皆様にお会いし、このサクセスストーリーを紡いでいくことを非常に楽しみに思っている。
著者について
マネージングディレクター
ジョアナ・レべスク
新たにFTストラテジーズを率いるジョアンナは、オーディエンス視点からクライアントのビジネスの変革と成長を支援することに情熱を注いでいる。
ジョアンナはアクセンチュアでコンサルティングのキャリアをスタートさせ、B2C、B2B企業、メディア、芸術、通信、消費財、金融サービスなど、さまざまな業種のクライアントを担当し、2桁成長を達成した顧客戦略の実行をリードするに至った。その後マニフェスト・グロース・アーキテクツ(Manifesto Growth Architects)を経てFTストラテジーズに参画し、現在は4人のパートナーの一人としてFTの新しい収益の柱のひとつであるコンサルティング事業を統括している。
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